Share

第2話 果てしなくオーバーキル

Author: うきぐも
last update publish date: 2026-08-25 23:03:26

果てしなくオーバーキルで『砂漠の皇帝』を倒した後。

人助けとはいえ『横取り』はよくない……

(誰かが先に戦っていた敵の戦利品を、途中参戦した者が手に入れる行為はマナー違反なのである!)

というわけで。

ドロップアイテムは3人組の冒険者たちにお渡しして、何の成果も得られずに帰ってきた俺とマリチ。

とりあえず戦闘後に彼らと話した内容や街の様子などにより

ある程度わかってきたことをまとめてみよう。

まず一つ目

俺とマリチのような最高ランクのキャラは今のところ他にいなさそう。

イメージとしてはソーマファンタジーがまだ始まったばかりの世界。

……俺たちが持ってる装備やクラスは、まだ存在すら知られていないかもしれない。

一言でいえばレベル上限が50の世界で俺たちだけ120。

次に感じたのは、自分たち以外にも冒険者は多く存在しているということ。

そのほとんどが初心者から中級者までの低レベル帯のようなので、未だに倒されたことのないネームドモンスターやシナリオボスが多くいる様子。

先ほど秒殺したデューンエンペラーも、今のこの世界ではそれなりに高位のモンスターらしく、あの3人組は一攫千金かつ大幅ランクアップを狙ってのチャレンジだったようだ。

そして最後に『マリチ』の存在。

俺がこの世界に来なければ、一人だけ別次元の強さで存在していたことになる彼女。

今まで何をどうやって過ごしていたのだろうか、普通に聞いてみた。

「んー。ずっと森の奥にある妖精族の村で静かに暮らしてた」

だ、そうだ。

冒険に出たこともなく普通に暮らしていたが、俺と出会った瞬間に過去のことを思いだしてすべてのスキルや魔法が使えるようになったらしい。

俺と似たような状況だな。

俺の中ではずっとプレイしていたもう一人の自分だし、この新しい世界では誰よりも信頼ができる頼れる相棒であることは揺らがない。

マリチも俺のことはずっと一緒に冒険してきた仲間だと思っているようだ。

そもそもこの世界がいつから存在して彼女がどう生きてきたのかは知る由もないが、この辺は少しずつ解明していけたらいいなと思う。

あと、大問題が一つ見つかった。

マリチが普段過ごしている古代樹の森の中の小さな家。

そこの裏庭にあった『現実世界と行き来できる扉』がなくなった。

そもそもマリチには元々その扉は見えなかったという。

俺が来た時もそこに扉があったという認識はなく、光と共に突然現れたとのことだ。

まだまだ謎は多い。

いつまで自分がこの力を行使できるのかもわからないが、せっかく自分の好きなゲームの世界に来れているのだからできる限り楽しみたいし、これからも色々調べていこう。

あ、あと気になってたのはこっちの世界とリアルとの時差だ。

その辺きちんと調べとかないと現実生活に戻った時に浦島太郎になってしまう

永遠にこの世界で生きていくのであれば問題はないが、それはどうなるかわからない

いつ力が失われるのかも分からないのだから、しばらくは謙虚に生きねばなるまい。

……。

とりあえずはっきりしているのは『扉』はなく、現実世界には戻れない事だ。

というわけでしばらくは冒険者稼業にいそしむことにした。

――――――――――――――――――――――――――

冒険者ギルドの本店は、現実世界で言うと県庁や市役所のような感じである。

支店が町の中にいくつかあり、そちらはホテルのロビーのような感じで宿泊施設と飲食店が併設されていたりする。

さて。

さっそく砂漠の皇帝を倒したことをギルドに報告する。

案の定ざわつく店内。

ギルド内にいた冒険者のほぼ全員がこっちに視線を向けている。

「ヨーイチさんとマリチさんはまだ未登録だったのですね」

受付のお姉さんは、目の前にいる規格外の新人コンビの働きに目を丸くしつつも、申し訳なさそうにしどろもどろになる。

それはそうだろう。

高難易度のモンスターをわざわざ倒してきて来た冒険者が、ギルド未登録のド新人とは普通考えない。

「未登録の方がネームドモンスターを討伐しても討伐報酬はもらえないんです……」

「仕方ないか」

まあ……お金はもらえなくともマリチが元々持ってるだろうから何とかなるし、いいか。

そう思いつつ彼女の方を振り返る。

するとマリチはこちらには目もくれずズンズンと前に出て、カウンターに背伸びをしながら言った。

「今日初めて街にでてきたからお金は全くないの。だからさっそく登録して」

あ、お金ないんだ。自炊派だったんだ。

確かに庭に畑はあった。それで生活してたんだ……

彼女のその発言を聞き、急に俺たちの路銀稼ぎは死活問題になった。

扉が復活するまで生き延びねばならない。

どんなに屈強な冒険者でも腹は減る。

「えっと…マリチさんとヨーイチさんはEランクからのスタートになりますが、本当にそちらのモンスターの情報でよろしいのですか?」

苦笑いしながら聞く受付嬢。

「まあ、はい……」

まだ目立ちたくはない俺が、遠慮がちに言いかけたところに

「望むところ!」

と、マリチは息を巻いてかぶせてくる。

俺たちが指さしていた依頼書に載っている次のターゲットは……

『密林の王』

凶悪な巨大蟹だ。

だが周囲からは少し不穏な気配がする。

どうやら砂漠の皇帝を倒したと自称している俺たちのことを疑っている者。

未だ撃破報告のほとんどない『密林の王』に、Eランクで挑もうとするバカな冒険者の顔を見たい者。

その他、大勢の冷やかし冒険者連中の視線が、一斉にこっちに集中しているのだ。

出現していることが分かっているネームドモンスター退治には、確かに多くの見学者が集まってくることがある。

そこで討伐を成功させれば、もちろん周りの評価は上がる。

だが目立つという事は人気には確かに繋がるが、アンチも増えるということだ。

あまり目立ちたくない俺としてはそれはあまり好ましいことではないが、路銀はいるし、覚悟を決めるしかないようだ。

多くの冒険者たちの視線を背中に受けながら、俺たちは森林地帯へと向かった。

――――――――――――――――――――――――

『密林の王キンググローブ』

めちゃくちゃ巨大な蟹のモンスター。

素早いハサミ攻撃に加え、凶悪な威力の水属性範囲魔法を使用する。

密林の中央を流れる大河の底に住み、岸辺を通りがかるものに水中から突然襲い掛かる。

俺はいつものようにルーンナイトで参戦。

こいつの厄介な点は二つ。

一つは普通に甲羅の防御力が尋常じゃなく高いこと。

そしてもう一つ。

こいつはネームド特有の特殊アビリティで、ものすごい速さのハサミラッシュ攻撃を行ってくるのだ。

さすがの今の俺でも多少のダメージはもらうか?

『密林の王』は『砂漠の皇帝』よりはやや高レベルな相手だ。

気を引き締めて挑みたい。

「今日は一番好きな格闘家で来てみた」

彼女は着慣れた竜の鱗の道着に身を包みつつニコニコしている。

……だんだんとマリチの性格が分かってきた。

俺の中の一部から生まれてきたはずの彼女だが、自分とは似ても似つかない。

それは俺が、俺ではない、明るくポジティブで凛として戦うキャラに憧れていたからだ。

ソーファンの中の俺は、ただ現実世界の俺が強くなっただけの地味な存在。

だが彼女は違う。俺が持っている英雄像を体現したような存在だ。

おそらく彼女は攻撃速度の化け物のモンスターに、あえて同じ土俵で殴り勝つつもりなのだろう……

カニは夜明けとともに水面に近づいてくる。

日が昇り切ってしまうと姿を隠してしまうので、この広大な大河の岸ですばやく見つけねばならない。

「いたぞーーー!!」

とか言ってたら誰かが叫んだ。

そしてその声のせいで集まってきたギャラリーはざっと百人はいようか。

俺たちがこいつに挑むという噂はわりと広まっていたようだ。

そして問題なことに、密林の王の攻撃範囲の広さを知らない者が多くいそう

「あの配置はヤバいよな……」

俺が呟くと同時にマリチは雷のように飛び出した。

と、同時だった。

キンググローブが口からブブブブブ……と泡を吹き始めたのは。

水系範囲魔法だ。

それも広範囲にばらまくタイプ。

ッザアアアアアアーーーー!!!

突如カニの周囲に津波のように水圧の波が広がった。

「うわあーーー!!」

大勢の冒険者が流され、水圧で大きなダメージを受ける。

というか、低レベルの冒険者にとっては、それだけで即死級のダメージだ。

「おらあーー!」

誰かが闇雲に電撃の魔法を飛ばした。

バシッ

カニの甲殻にかすかな傷がつく。

ブブブッブブブ

カニの巨体が飛んだ。

電撃を飛ばした黒魔導士の前にズンッッ! っと降り立ち、爪を振り上げる。

そして……

シュドドドドッドドドッドドド

ものすごい速さでハサミのラッシュ攻撃が始まった。

一瞬にして黒魔導士をズタズタにして吹き飛ばした後、こんどは移動攻撃を始めた。

サカサカサカサカ……!

移動するスピードも想像を絶する早さだ。

滑るような動きであたりを蹂躙していく。

『うわああああああ』

『ぎゃーーーー』

カニの周囲にいた冒険者たちがどんどん吹き飛ばされていき……

阿鼻叫喚の地獄が始ま……『らない』

シュドドドッドドドドドッド……カカカカカカカ

???

「無明拳」

パンッ!!!!!

ビチビチビチビチビチビチ

あたりに大量のカニカマが降り注いだ。

正確にはカニカマはカニではないので普通にカニのすり身か。

『え?』

周囲の冒険者たちは何が起こったかわからず、白い身を纏って呆然としている。

―――。

説明しよう。

密林の王、キンググローブは魔法で怒って特殊アビリティを発動し、高速攻撃で周囲に群がる冒険者たちを攻撃し始めた。

しかしそこに一瞬にしてしれっと紛れ込んだ俺は、その攻撃を剣で全て受け止め、カニの進行を阻んだ。

その隙に横に立っていたマリチが必殺拳で殴ったら、ワンパンで爆発して飛び散ったというわけだ。

そして今、俺たちの目の前にはひときわ輝く鋼鉄のような甲羅の破片が落ちている。

おもむろにそれに手をかける。

「これ持っていけばいいよな」

無言でうなずくマリチ。

そしてすかさず彼女は空間転移の魔法を唱え始める。

通常は長い詠唱を必要とするが(以下略)

――――――――――――――――――――――――――

「生臭っ!さすがにお風呂入ってから来てくださいよ!」

受付のお姉さんに叱られた。

だが我々にはお金がない。

だから銭湯にも入れない。

「そこを何とかするためにもまずは報酬を……」

よし。

なんだかんだで最低のEクラスから一気にCまで上がることができた

やっと風呂に入れるし普通のご飯にもありつける。

あとはそろそろマリチ家に戻って、改めて現実世界への扉の有無を確認したいとこだな。

そう思った矢先である。

「あのう……」

背後から声がした。

「あなたたちの腕を見込んでお願いがあります……」

そこにいたのは見るからに駆け出しな雰囲気の冒険者2人組。

と、明らかな騎士風の人物。

「僕たちの村をオークから助けて欲しいんです」

オーク。

屈強な肉体に人間に近い知能を持つ獣人族。

この世界にはいくつかの獣人族が存在している。

そして国家レベルでの争いが各地で繰り広げられているのだ。

「私から事情を説明しよう」

隣にいる騎士風の女性が話し始めた。

いや、今は早く帰りたいのに‥‥‥。

Continue to read this book for free
Scan code to download App

Latest chapter

  • 現実と異世界を往復したら無敵になりましたが謙虚です   エピローグ

    俺はむくっと起き上がったそこはマリチの家の庭「元凶になったドラゴンを倒したのに……なんで私たちはまた異世界なんだろうね」ぶっ倒れていた俺の横に座っていた日枝薫が少し不思議そうに呟いた「……」―――俺が望んだからだ。まだこの世界の探索は始まったばかりだしやらなきゃいけないクエストもイベントもいっぱい残っているからな!「みんなどうやってここに?」素朴な疑問だ「私は家で勉強してたら部屋に扉が出たから。そこから入った」妹の曜ヒカリがとんでもないことを言った「湊くんとマリチさんが消えた後、あそこに扉が出たので」なるほど俺たちが飛ばされた後の話か「私は女神さまに会ったよ」マリチは腕を腰に当て、ふんぞり返りながら言った確かにあの時マリチも一緒に飛ばされていったからな……「あ、そうなんだ。なんて言ってた?」マリチは少し空を見上げながら考え込む「あんまり覚えてないな……お礼を言われた気はするけど」「そうなのか」「あ、でも。マリチにも扉、見えるようになりました」『えっ』衝撃の発言に、俺と日枝さんと曜がそろって声を上げる「てことで、これからはそっちにも遊びに行こうかなと」それとんでもないことになるやんこのお気楽な最強女子を俺たちの現実世界は受け止められるんか?「じゃあ私もまた冒険しに来ようかな」曜はえへへと笑いながら言った俺にとってはライフワークなのに、へらへらしながら言ってるんじゃないよ「それよりさ」マリチがニヤリと笑った「そろそろ深海の悪魔が湧くころだよ。行くよね?」『深海の悪魔』それは魔の海域と呼ばれる場所にひっそりとある海底洞窟に

  • 現実と異世界を往復したら無敵になりましたが謙虚です   最終話 ずっと友だった君へ

    「無明拳。からのもっかい無明拳」ガン!……ガン!!必殺拳を二連続で命中させることにより、連携空間「極光」が発生する。俺はそこにすかさず聖球の魔法をぶちこむ。龍の頭部が大きく後ろに揺らめき、側頭部の結晶がはじけ飛ぶ。が、大きくのけぞった頭部は再び遠心力をつけて攻撃してくる。口を大きく開いて噛みついてくるのを、すかさず割り込んだ俺が受ける。マリチはそれを当然のことのように感じているのか、感謝をすることもない。 そもそも最初から回避をする気もないようだ。龍は相変わらずレーザーを撃ってくる。たまにマリチをかすめることもあるが、武術家の膨大なHPで致命傷には至らない。しっぽや噛みつきといった特大物理攻撃に関しては、俺が先読みして受ける。「無限・羅刹衝」マリチの両手から放つ衝撃波が、龍の腹部を大きくへこませた。その衝撃で最後まで残っていた星核結晶に大きなひびが入り、バラバラと剥がれ落ちる「ああ……やっぱり蛇だったんだなあ」虹色の結晶核をすべて剥ぎ取られた龍は、もはや『龍』とは呼べない。翼は捥がれ、たくさんの角のように伸びていた結晶は全部砕かれ、全身は光沢のある白い鱗でおおわれている。かろうじて残っている小さな四肢が、蛇をまだ龍だと言わしめる。「極大雷撃槍」マリチが腕を振り上げて、巨大な雷魔法の槍を放った。バリバリバリバリ……!!だが電撃は龍に当たるか当たらないかのところで、虹色の障壁に阻まれる。「結晶の鎧がなくとも、そもそも星核の力を吸い取ってるから魔法は効かないか」俺は冷静に敵の動きを見ながら、何が効いて何が効かないかを観察していく。 (決して横で解説してくる謎のおじさんになっているわけではない)が、そんなことは一向にお構いなしの奴がここにいる。「連続流星群」マリチが両手を大きく広げ、その手をまっすぐ上にあげる。と、同時に龍の上空に無数の魔法陣が現れて巨大な隕石が落ちてくる。それを防ぐべく、龍の身体に無数に現れた防御障壁の輝きで、辺りはまるで昼のように輝く。だがマリチの攻撃はとどまることがない。「漆黒の闇を統べし者、我が求めに応じ疾くきたれ。いでよ冥王」素早く両手を回して魔法陣を生みだすと、そこから黒い巨大な人型の深い闇が現れる。「世界を律する滅びの鳴動。審判!!」イバラの様に伸びる無数の黒い稲妻が、アメノ

  • 現実と異世界を往復したら無敵になりましたが謙虚です   第21話 淡い光の道を

    淡い光の道を駆け抜けたその直後。……夜か。辺りは闇に包まれていた。眼がまだ慣れていないためほとんど何も見えないが、ここがどこかは予想がつく。転移魔法は一度行ったことのある場所しか行けない。龍が現世でゆかりのある場所は、あの奥宮しかないはずだ。 ……だが妙だ。静かすぎる。あんな巨体、境内に隠れる場所などほとんどないはず。さらに言えば黒竜が現れた際に、ほとんどの木が吹き飛んでいる。何処にいても剥き出しになるはずだ……いくら夜の闇の中だとは言え、まったく見えないということは……。ここではない別の場所に現れているのか……?俺は戸惑いの中、一瞬だけ後ろを振り返ってみた。遠くには町の小さな光が綺麗に見えている。やはりここはあの奥宮のあった高台。そして扉がつながったということは……はっと気が付いた。――暗すぎる。昨日はちゃんと月が出ていた。今日の月齢こそ正確にはわからないが、満月に近い頃合いだったはずなのにこの闇の深さ。俺は本来あるべき月を見上げた。 やはり―――そこにいたか。異世界と現実世界を結ぶ、伝説のモンスターただ……その姿は――「カオスドラゴンになっとる……」先ほどまでの星の核の上で戦っていた時は、長い身体をくゆらせる蛇体だった。今はそこにドラゴンの様な翼膜を備えた巨大な翼を持っている。もしかして単純に、飛ぶ必要がない時は収納可能だった?元々ソーファン世界で戦った時は無駄にホバリングしていた。ゲームだとバトルフィールドは閉鎖空間なので、その飛行能力に意味はなかったが、ここは何でもありの現実世界。大型モンスターの飛行移動は、被害の桁を変えてしまう。「マズいぞ……」小さな蛇神様だったときのアメノミカヅチがどういう神さまで、どういう経緯でここに祀られていたのかは分からない。だが無理やり召喚されて、暴走するほどのエネルギーを与えられ、モンスターに成った状態で、ここに戻ってきたのだ。女神さまの意思でもあり、異世界の精霊たちの意思でもある。二つの世界のバランスを取る者(自称)として……大変申し訳ないのだが、龍の神さまにはもう一度お鎮まりいただく!って……俺が負けたら、この龍で世界が滅びるかもしれないな……あ、でもそうなったら次は別の世界からたくさんの勇者たちがやってきて アメノミカヅチを倒すという第

  • 現実と異世界を往復したら無敵になりましたが謙虚です   第20話 戦いは始まる

    戦いは始まった。巨大な水の槍は龍の輝く鱗をバキバキと砕きながら突き進む。しかし圧力は少しずつ弱まり、やがて水飛沫へと形を変えて消えていく。全ての水が飛び散り霧散しても、龍の硬質のたてがみを破壊しきれてはいない。周囲の星核結晶と同じ淡く発光していた龍の身体。 しかし、ゆっくりと動き始めると同時にその光が消える。……充電を途中でやめた。みたいな状態?鎌首を持ち上げるように上体を起こすと、龍の胴体は硬質の結晶同士が擦れあう轟音を立てながらこちらに這い寄ってきた。俺はまだ敵との距離がある間に、カオスドラゴンを『調べる』《星龍 アメノミカヅチ》『その強さは計り知れない』と表示されている。ステータスや体力ゲージなどはどこにも見えない。……今のでどれくらいダメージを与えたのかも分からないな。時間制限のある絶対防御を最初から使ってしまうのはマズい。相手の攻撃の威力が判断できないし、長期戦の戦略が組みにくくなる。「俺がダメージをもらった時の回復は任せる!」龍から距離を取って下がっている日枝さんに、俺は合図を出しておく。「わかった!」俺は威嚇のための閃光魔法を放った。そこか。とでも言うように、龍がこちらを向く。その動きは龍ではない。蛇だ。というか、この龍は……蛇なのだ。異世界にて強大に成長したことで龍に成ったのだ。アメノ(天に棲まう)ミカ(門を制する)ツチ(蛇)なのだ。何処にあるかもよく分からなかった口が、裂けるように横に開いた。……その姿も蛇をほうふつとさせるヴァハッ無数の小さな何かを飛ばしてくるその動きは、さながら毒を吐きかけるが如く。高速で飛んでくるその何かを、俺は身幅の広い両手剣で受け止める。「結晶の欠片か…!」 それは細かく砕かれたような無数の結晶の破片だ。全てが尖った鋭利な構造をしており、刺さると厄介そうである。この巨大な敵と戦うのに、小細工は必要ないだろう。俺は剣を振りかぶると、思い切りよく胴体に切りつけた。ガギッ!!うん。まあ、めちゃくちゃ堅いが、一応ダメージは入るな。「無双連斬」25回攻撃。ドガガガガガガガガガガッガガッガッガが、モーションが長すぎる。途中で巨大な尾による薙ぎ払い攻撃が飛んできた。攻撃をキャンセルして剣で受ける。ドガッッ身体が浮かされ、100メートルぐらい飛ばされた

  • 現実と異世界を往復したら無敵になりましたが謙虚です   第19話 どこにいる?

    「で、どこにいるの? カオスドラゴン……その……アメノミカヅチ様は」「それなんだよな……」ソーファン世界で戦ったカオスドラゴンは、星の核に寄生していた。 戦いは謎の異空間みたいなところで行われていたが、あれはどこなのか。通常の方法でその場所には行けないだろうから、こちらから挑むことができない。ソーファン世界のモンスターは俺たちを感知してから実体化していたが、それはおそらくこちらの世界とのつながりが弱かったからなのだろうだがカオスドラゴンは元々こちらの存在……。もしこっち側に出たら、最初から実体化してるのではないか?「元々ここでお鎮まり頂いていたのなら、実は良い神さまだったりしない?」俺の不穏な予測とは裏腹に、日枝薫が素朴な疑問を口にした。が、それはないんじゃないかな……。何故なら、暴走して魔獣と化したからこそ討伐イベントが発生したのだ。そしてそもそもに俺が異世界に行くことになったのも、倒さなければならない存在だと判断されたからだろう「暴走したソイツと戦ったのが事の始まりだからなあ……」「ダメかぁ」やはり被害を最小限にするにはまだ活動を始めていない今、倒すしかない。「なんとかしてこっちから行くしかないな」「やっぱりそうなるか……」いままで扉が出たり出なかったりする条件がいまいちわからなかったが、今ならなんとなくわかる扉はおそらく必要に応じて出してくれてたんだろう。全ては『龍』を倒すことにつながるように。「じゃあ行ってくる」俺は魔導書を出し、転移魔法を唱え始めたガシッ魔導書を持っている手首を掴まれた「私を置いていくつもり?」詠唱は一瞬にして完成してしまっている。日枝薫の表情を確認する間もなく、転移空間は俺たち二人を飲み込んだ ブオォォン腕を掴まれたまま俺たちが出てきたのは、アパートの風呂場。すなわち光る『扉』の前だ。 なにかを訴えかけるように、いつもより輝きが強い気がする。「行けってことだよね」電気がついていない夕暮れ時の風呂場である。薄暗い室内でなお、日枝薫の目は輝いている。「いや、俺だけで行くよ」強すぎる敵である。 以前戦った時にわかったが、レベルマックスの俺たちと対等のモンスターだった。まだ装備やレベルがマックスではない日枝さんが戦うのは危険だ。「君の言いたいことはわかる。でも支援ぐらい

  • 現実と異世界を往復したら無敵になりましたが謙虚です   第18話 町の図書館

    大学の図書館にめぼしい発見はなく、街の図書館にて見つけた情報。ようやくそれらしい記述を見つけたかもしれない。俺はバリバリに理系で、こういうジャンルの専門家でもない。……だからこれはあくまでも想像の域を出ない。 記紀(古事記・日本書紀)には載っていない古い郷土史、風土記の記述。いわゆる地元以外では知られない、小さなお社などの看板等でしか見ない物語。そこに登場しているお宮の名前は『神戸(カミド)神社』主祭神はふつうに天照大御神、と、地元の氏神様。 けどそのお宮の隅っこに摂社として小さな祠がある。そこに祀られている『門蛇大明神』とやらの御祭神が。『天之御門蛇(アメノミカヅチ)』 または 『天石門別蛟(アメノイワトワケノミズチ)』という謎の存在。これは有名な天岩戸伝説に関わっているらしい。 いわゆる、天照大御神が天岩屋に隠れたという有名な物語だ。御門というのはその時に洞窟をふさいだ岩の事。門の神さまである。岩の洞窟の入口を岩で防いだら普通、隙間が結構できる。自然石と自然石なのでピッタリ合わさることにはならないからだ。しかし岩戸は結界となり外界とは隔絶される。その岩戸にできる、ほんの小さな隙間を通り抜け、出入りできるモノが居た。岩戸隠れした際に隙間から出入りし、天照大神の話し相手になっていたのがこの……『アメノミカヅチ』という、神というか……蛇の妖怪だ。この物ノ怪は、岩戸の隙間を何度も出入りしていた。 つまり、結界をくぐり抜ける力を持っていたと考えられる。それこそが門を越える力……。現実世界と異世界の次元を飛び越えられる力?ソーマファンタジーという異世界において、一万年前にあった星核の暴走の際。そのエネルギーを喰わせるために元になった、神獣と呼ばれるモノの正体。 これかも……。人智を越えている。 だが、筋は通る。次元を超える力を持っていた存在だったからこそ、異世界から何らかの方法で召喚されたのかもしれない。だが……もしそうだとすると、カオスドラゴン……アメノミカヅチは、いつかこちらに還ってくるのだ。俺と同じように異世界の力を手にして。何故最初のきっかけがカオスドラゴン討伐だったのか。この町に住んでいた俺が代表として選ばれて異世界に行ったのか。全ては繋がっていたに違いない。俺である必要がない気も少しする

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status