LOGIN果てしなくオーバーキルで『砂漠の皇帝』を倒した後
人助けとはいえ『横取り』はよくない……
(ソーファン世界では、誰かが先に戦っていた敵のドロップを後から参戦した者が手に入れる行為はマナー違反なのである!) というわけでドロップアイテムは3人組の冒険者たちにお渡しして、何の成果も得られずに帰ってきた俺とマリチ
とりあえず戦闘後に彼らと話した内容や街の様子などにより
ある程度わかってきたことをまとめてみようまず一つ目
俺とマリチのような最高ランクのキャラは今のところ他にいなさそう
イメージとしてはソーマファンタジーがまだ始まったばかりの世界ゲームだと追加データとして後から増えた装備やクラスは存在すら知られていないかもしれない
強さの感覚でいえばレベル上限が50の世界で俺たちだけ120ぐらいあるゲーマー諸氏の皆なら分かると思うが、レベル50の冒険者が何百人集まってもレベル120の達人にはかなわない
当たらないしダメージが入らないし範囲攻撃で即殺されるからだまあそれは置いといて。
次に感じたのは、自分たち以外にも数千人単位で冒険者は存在しているということ
そのほとんどが初心者から中級者までの低レベル帯なわけなので、未だに倒されたことのないネームドモンスターやシナリオボスが多くいる様子
先ほど秒殺したデューンエンペラーは今のこの世界ではそれなりに高位のモンスターで、あの3人組は一攫千金かつ大幅ランクアップを狙ってチャレンジしにきていたようだ
冒険者のギルドには日々様々な仕事の依頼が舞い込んでくる
それらをこなしてポイントを積み重ねていくとランクが上がるという仕組みだ仕事の中には国家からの依頼も混ざっている
高位ランクに上がるにはある程度そういったキークエストをこなす必要があり、強力なネームドモンスター退治の多くは国家治安部隊からの依頼にもなっているそして最後に『マリチ』の存在
俺がこの世界に来なければ一人だけ別次元の強さで存在していたことになる彼女
今まで何をどうやって過ごしていたのだろうか、普通に聞いてみた「んー。ずっと森の奥にある妖精族の村で静かに暮らしてた」
らしい
冒険に出たこともなく普通に暮らしていたが、俺と出会った瞬間に過去のことを思いだしてすべてのスキルや魔法が使えるようになったし、想像するだけで持っている装備を引き出せるようになったという
まるで俺と同じ状況
俺の中ではずっとプレイしていたもう一人の自分だし、この新しい世界では誰よりも信頼ができる頼れる相棒であることは揺らぎようもない
マリチも俺のことはずっと一緒に冒険してきた仲間だと思っているようだった
そもそもこの世界がいつから存在して彼女がどう生きてきたのかは知る由もないが、この辺は少しずつ解明していけたらいいなと思う
あと、大問題が一つ見つかったマリチが普段過ごしている古代樹の森の中の小さな家
そこの裏庭にあった『現実世界と行き来できる扉』がなくなったそもそもマリチには元々その扉は見えなかったという
俺が来た時もそこに扉があったという認識はなく、光と共に突然現れたとのことだまだまだ謎は多い。
いつまで自分がこの力を行使できるのかもわからないが、せっかく自分の好きなゲームの世界に来れているのだからできる限り楽しみたいし、これからも色々調べていこうあ、あと気になってたのはこっちの世界とリアルとの時差だ
その辺きちんと調べとかないと現実生活に戻った時に浦島太郎になってしまう
永遠にこの世界で生きていくのであれば問題はないが、それはどうなるかわからないいつ力が失われるのかも分からないのだから、しばらくは謙虚に生きねばなるまい
とりあえずマリチ家に帰ったら『扉』はなくなっていたわけでしばらく現実世界には戻れないというわけでしばらくは冒険者稼業にいそしむことにした
――――――――――――――――――――――――――
冒険者ギルドの本店は現実世界で言うと県庁や市役所のような感じである
支店が町の中にいくつかあり、そちらはホテルのロビーのような感じで宿泊施設と飲食店が併設されていたりする
さて。さっそく砂漠の皇帝を倒したことをギルドに報告する
案の定ざわつく店内
店内で食事をしてた冒険者のほぼ全員がこっちに視線を向けている
「ヨーイチさんとマリチさんはまだ未登録だったのですね」
受付のお姉さんは、目の前にいる規格外の新人コンビの働きに目を丸くしつつも、申し訳なさそうにしどろもどろになる
それはそうだろう
高難易度のモンスターをわざわざ倒してきて来た冒険者が、ギルド未登録のド新人とは普通考えない「未登録の方がネームドモンスターを討伐しても討伐報酬はもらえないんです……」
「仕方ないか」まあ……お金はもらえなくともマリチが元々持ってるだろうから何とかなるし、いいか
そう思いつつ彼女の方を振り返ると、マリチはこちらには目もくれずズンズンと前に出て背伸びをしながら言った
「今日初めて街にでてきたからお金は全くないの。だからさっそく登録して」
あ、お金ないんだ。自炊派だったんだ。
確かに庭に畑はあった。それで生活してたんだ……彼女のその発言を聞き、急に俺たちの路銀稼ぎは死活問題になった
扉が復活するまで生き延びねばならない
どんなに屈強な冒険者でも腹は減る 「えっと…マリチさんとヨーイチさんはEランクからのスタートになりますが、本当にそちらのモンスターの情報でよろしいのですか?」苦笑いしながら聞く受付嬢
「まあ、はい……」
まだ目立ちたくはない俺が遠慮がちに言いかけたところに
「望むところ!」
と、マリチは息を巻いてかぶせてくる
俺たちが指さしていた依頼書に載っている次のターゲットは
『密林の王』 凶悪な巨大蟹だだが周囲からは少し不穏な気配がする
どうやら砂漠の皇帝を倒したと自称している俺たちのことを疑っている者 未だ撃破報告のほとんどない『密林の王』にEランクで挑もうとするバカな冒険者の顔を見たい者 その他、大勢の冷やかし冒険者連中の視線が、一斉にこっちに集中しているのだ出現していることが分かっているネームドモンスター退治には確かに多くの見学者が集まってくることがある
そこで討伐を成功させればもちろん周りの評価は上がる
だが目立つという事は人気には確かに繋がるが、アンチも増えるということだあまり目立ちたくない俺としてはそれはあまり好ましいことではないが、路銀はいるし、覚悟を決めるしかないようだ
多くの冒険者たちの視線を背中に受けながら、俺たちは森林地帯へと向かった
―――――――――――――――――――――――― 『密林の王キンググローブ』めちゃくちゃ手数の多い巨大な蟹のモンスターであり、凶悪な威力の水属性範囲魔法を使用する
密林の中央を流れる大河の底に住み、岸辺を通りがかるものに水中から突然襲い掛かる俺はいつものようにルーンナイトで参戦
カニの弱点は、雷と氷である「エンチャントスピリット雷神、氷神」
こいつの厄介な点は二つ 一つは普通に甲羅の防御力が尋常じゃなく高い そしてもう一つ。こいつはネームド専用のア特殊アビリティで、攻撃間隔がほとんどないものすごい速さの連続攻撃を定期的に行ってくるのださすがの今の俺でも多少のダメージはもらうか?
『密林の王』は『砂漠の皇帝』よりはやや高レベルな相手だ 気を引き締めて挑みたい「マリチは今日は本職の格闘家で来てみた」
彼女は着慣れた竜の鱗の道着に身を包みつつニコニコしている
……だんだんとマリチの性格が分かってきた
俺の中の一部から生まれてきたはずの彼女だが、自分とは似ても似つかないそれは俺が、俺ではない、明るくポジティブで凛として戦うキャラに憧れていたからだ
ソーファンの中の俺は、ただ現実世界の俺が強くなっただけの地味な存在
だが彼女は違う。俺が持っている英雄像を体現したような存在だおそらく彼女は攻撃速度の化け物のモンスターにあえて同じ土俵で殴り勝つつもりなのだろう……
カニは夜明けとともに水面に近づいてくる
日が昇り切ってしまうと姿を隠してしまうので、この広大な大河の岸ですばやく見つけねばならない「いたぞーーー!!」
とか言ってたら誰かが叫んだ
そしてその声のせいで集まってきたギャラリーはざっと百人はいようか 俺たちがこいつに挑むという噂はわりと広まっていたようだそして問題のあることに、密林の王の攻撃範囲の広さを知らない者がどうやら多い
「あの配置はヤバいよな……」
俺が呟くと同時にマリチは雷のように飛び出したと、同時だった
キンググローブが口からブブブブブ……と泡を吹き始めたのは水系範囲魔法だ。それも広範囲にばらまくタイプ
ッザアアアアアアーーーー!!!
突如カニの周囲に津波のように水圧の波が広がった
「うわあーーー!!」
大勢の冒険者が流され、水圧で大きなダメージを受けている
というか低レベルの冒険者にとってはそれだけで即死級のダメージだ「おらあーー!」
誰かが闇雲に電撃の魔法を飛ばしたバシッ
カニの甲殻にかすかな傷がつくブブブッブブブ
カニの巨体が飛んだ
電撃を飛ばした黒魔導士の前にズンッッ!っと降り立ち爪を振り上げる
そして
シュドドドドッドドドッドドド
ものすごい速さでハサミのラッシュ攻撃が始まった
一瞬にして黒魔導士をズタズタにして吹き飛ばした後、こんどは移動攻撃を始めた
サカサカサカサカ……!
移動するスピードも想像を絶する早さだ
滑るような動きであたりを蹂躙していく『うわああああああ』
『ぎゃーーーー』カニの周囲にいた冒険者たちがどんどん吹き飛ばされていく
そして阿鼻叫喚の地獄が始ま……らないシュドドドッドドドドドッド……カカカカカカカ
???
「無明拳」
パンッ!!!!!
ビチビチビチビチビチビチ
あたりに大量のカニカマが降り注いだ
正確にはカニカマはカニではないので普通にカニのすり身か『え?』
周囲の冒険者たちは何が起こったかわからず白い身を纏って呆然としている
・・・・・・。
説明しよう
密林の王、キンググローブは魔法で怒ってボスアビを発動して高速攻撃で周囲に群がる冒険者たちを攻撃し始めた、しかしそこに一瞬にしてしれっと紛れ込んだ俺はその攻撃を剣で全て受け止めカニの進行を阻んだ
その隙に横に立っていたマリチが必殺拳で殴ったらワンパンで爆発して飛び散ってしまったというわけだ目の前にはひときわ輝く鋼鉄のような甲羅の破片が落ちている
おもむろにそれに手をかける俺
「これ持っていけばいいよな」
無言でうなずくマリチ
そしてすかさず彼女は空間転移の魔法を唱え始める
通常は長い詠唱を必要とするが(以下略) ―――――――――――――――――――――――――― 「生臭っ!さすがにお風呂入ってから来てくださいよ!」 受付のお姉さんに叱られただが我々にはお金がない
「そこを何とかするためにもまずは報酬を……」よし。
なんだかんだで最低のEクラスから一気にCまで上がることができたやっと風呂に入れるし豪華なご飯にありつける
あとはそろそろマリチ家に戻ってもう一度、現実世界への扉の有無を確認したいそう思った矢先である
「あのう……」
背後から声がした「あなたたちの腕を見込んでお願いがあります……」
そこにいたのは見るからに駆け出しな雰囲気の冒険者2人組
プラス、明らかな騎士風の人物「僕たちの村をオークから助けて欲しいんです」
オーク。屈強な肉体に人間に近い知能を持つ獣人族
ほとんどの個体は知能が低いが、まれに高度な思考を行う高位魔導士の個体も存在するこの世界にはいくつかの獣人族が存在している
そして国家レベルでの争いが繰り広げられているのだ「私から事情を説明しよう」
隣にいる騎士風の女性が話し始めた 早く帰りたいのに‥‥‥とりあえず事件は解決したのでそのまま学校は行った基本的に真面目な俺であるそして学食で早めの夕食を摂りながら冷静になって考えるふむ……こっちにもでるんだ……多分だけど世間でニュースとかになってないことを考えると、今のところモンスターの出現はあいつらだけだとは思うし、もしそうなら明らかに俺となにか関係がある雑な考察だけど、俺が向こうの世界と行き来することによって特異点になっていて、二つの世界がどうのこうの……に違いないでも、モンスターがこっちの世界に出る条件は今のとこ不明だし、俺にはどうすることもできない‥‥‥よな?もちろんこれからも冒険はするし、その過程で出会ったモンスターは倒すそしてあの世界が大好きでプレイヤーをやってた俺が、それを現実で感じられるリアルの異世界生活もやめるわけにはいかないそうなるとまたこっちにモンスターが出るのかもしれないけど、そのときはまた倒すだけだ法則がわからないから対策はできないが、俺と出会わない限り向こうのモンスター達は実体化しないのならそう被害は出ないだろう(という希望的観測)もし何か起きたとすればそれはこのルールを作った異世界の女神様のせい……でもこの先向こうの世界でもっと強力な災害級のモンスターを倒すことになって、それがこっちの世界に出るようなことがあったら……そのときはどうなるんだろうな……―――――――――――――――――――――――――――――――――この時、俺はとても大事なことを忘れていた向こうの世界で最初に戦った最強の存在『カオスドラゴン』のことをでもまあ、それはまだ先のお話―――――――――――――――――――――――――――――――――向こうの世界で倒したモンスターとこっちに入り込んでくる事象がリンクしているのであれば、この先どこかに『砂漠の皇帝』デューンエンペラーや、一個小隊のオークがやってくるはずである学校からの帰り道信号待ちで自転車を停止させながらの思考もし俺が異世界に行きだしてから居たところに湧くのであれば、出そうなのは通学路の国道や、買い物で寄っているスーパー周辺、大学構内……でも少しずつ進みながら脳内ミニマップ(索敵レーダー)に意識を集中させるも、検知範囲内にモンスターを示す赤い光は存在していない今のところ何か起きそうな様子はない「ねえ湊(みなと)君じゃな
「お!」「マリチには見えないけど、あるんだね。例の扉が」俺は静かにうなずき、扉の取っ手に手をかけたそしてゆっくり開きながらマリチの方を振り返る彼女はにっこりしながら手を振っていた――――――――――――――――――――――ドアをくぐるとまばゆい光に包まれ、一瞬吸い込まれるような感覚になるその後、目が覚めるような青空が視界に入り……「えっ?」俺は空の上に出た「もしかしてドアの向こう側はまさかのランダム配置!!?」マズイ。魔導士系のジョブであれば何とでもなりそうだが、今はルーンナイトいちおうサブクラスというシステムがあり、もう一つ予備クラス『ブロックナイト』がついているのだがこの現状を打破するには……?今、自分の体勢がどうなってるか最早わからないが、ものすごい速さで落下していることだけは確かだ「イチかバチか!絶対防御!!」現在の高度も不明。ならば少しでも早い方がいいと判断し、俺はサブクラスのアビリティ『物理攻撃無効』を発動させたその直後ズドンッッッ!!地面?に落ちたものすごい土煙が巻き起こり、周囲にはちょっとしたクレーターができているさすがに軋む身体を少し動かしてみるが、どこかが痛む等はないようだ「耐えた……か」どれほどの高さから落ちたかはわからないが、時間にしておそらく10秒空気抵抗があるから実際にはわからないが、500メートルぐらいは落ちたかざっくり計算すると速度はおよそ時速300キロちょいてことは時速300キロの土の塊にぶつかっても無傷でいられることは証明されたわけだ(アビリティ使用という条件下ではあるが)土煙も晴れてきた頃合いを見て、俺は自分が作ったクレーターから這い上がったザワ……ん?思ったより多くの人がいるそして土煙の中の人影(俺)の方に向かって目を凝らしているさっと周囲を見渡した感じ、ここは神社の境内とかそんな感じの場所だなるほど……俺は周りに集まりつつあった人たちの視線を素早く避けてクレーターの中にそっと引き返すと、手のひらを上に向けて転移魔法の呪符を取り出すブォォォン我ながら英断である頭の中で思い浮かべたのは独り暮らしのアパートの自室実は一瞬ソーファン世界の街を想像したのだが、上手くいかなかったのだつまりこっちの世界とあっちの世界は転移魔法では移動できないという事だ一瞬にし
冒険者ギルドで突如話しかけられた俺たち”全身皮剥狂”ザクトズルトそれがオーク部隊の小隊長の名である「ぜんしんかわはぎきょうってすごい肩書だなあ……」マリチは苦笑する俺たちに声をかけてきた騎士風の女性(どうやら隣国の王立騎士団の小隊長さんだったようだが)の語った内容、それはある地方都市の領土内にある小さな村……そこがオークの一個小隊に占拠されたというのだ二人の冒険者はそこの村出身で、地形や街の構造をよく知る者たちそしてまだ生存者も多いであろう村に今すぐにでも救助に行きたいと切望している話を聞きながらぼそぼそと話をする俺とマリチ「ザクトズルトっていやあミッションで初期に戦った記憶あるなあ」「今だと多分通常攻撃で1発だと思う」「何か気になることでも……?」騎士小隊長が怪訝そうな表情で聞いてくる「え、あ、いや何でもないです。まあ行きますか。退治に」あまりにも日常のテンションで答える俺をみて、さすがに心配そうに聞いてくる「密林の王を討伐されただけのことあって、さすが剛毅ですね。だがしかし!ザクトズルトは残忍な性格で、しかもなかなか狡猾だと聞きます。もしかしたら生かした村人を人質に使うなども平気でやってくるかもしれません…!」「そ、そうですよ!貴方たちお二人でもあの屈強なオーク小隊にはさすがに手こずると思います…」「なんせ数が多いですし!」地元出身者の二人の冒険者も口々に焦りと伝えてくる「まあ……」俺はおもむろに冒険者二人と騎士団小隊長の手をつながせるそして冒険者のうちの一人の青年の肩に手を置いて振り向いたそして静かにうなずくマリチがパッと俺の手を掴んで転移魔法を詠唱するブォォォン『えええーーーー』ミッションで一度行ったことのある場所には基本的に転移可能だまあ、平たく言うと俺たちはこちらの世界のどこでも大体いける騎士は領土内の人だし冒険者たちも出身がそこだから、つまり全員そこに行ったことのあるメンバーなのでこの方法での移動が可能である突然の出来事に動揺する3人を引き連れ、一瞬にして村の入口に到着した我々「おお…懐かしいなあ…二年ぶりか…」「うん…でも入口の門とかは壊されてるし…」「そしてあの邪悪な紋様。奴らの仕業だな」騎士小隊長の指さす方向には獣人たちが信奉する神のおどろおどろしい紋様が、血のような色で殴り書き
果てしなくオーバーキルで『砂漠の皇帝』を倒した後人助けとはいえ『横取り』はよくない……(ソーファン世界では、誰かが先に戦っていた敵のドロップを後から参戦した者が手に入れる行為はマナー違反なのである!)というわけでドロップアイテムは3人組の冒険者たちにお渡しして、何の成果も得られずに帰ってきた俺とマリチとりあえず戦闘後に彼らと話した内容や街の様子などによりある程度わかってきたことをまとめてみようまず一つ目俺とマリチのような最高ランクのキャラは今のところ他にいなさそうイメージとしてはソーマファンタジーがまだ始まったばかりの世界ゲームだと追加データとして後から増えた装備やクラスは存在すら知られていないかもしれない強さの感覚でいえばレベル上限が50の世界で俺たちだけ120ぐらいあるゲーマー諸氏の皆なら分かると思うが、レベル50の冒険者が何百人集まってもレベル120の達人にはかなわない当たらないしダメージが入らないし範囲攻撃で即殺されるからだまあそれは置いといて。次に感じたのは、自分たち以外にも数千人単位で冒険者は存在しているということそのほとんどが初心者から中級者までの低レベル帯なわけなので、未だに倒されたことのないネームドモンスターやシナリオボスが多くいる様子先ほど秒殺したデューンエンペラーは今のこの世界ではそれなりに高位のモンスターで、あの3人組は一攫千金かつ大幅ランクアップを狙ってチャレンジしにきていたようだ冒険者のギルドには日々様々な仕事の依頼が舞い込んでくるそれらをこなしてポイントを積み重ねていくとランクが上がるという仕組みだ仕事の中には国家からの依頼も混ざっている高位ランクに上がるにはある程度そういったキークエストをこなす必要があり、強力なネームドモンスター退治の多くは国家治安部隊からの依頼にもなっているそして最後に『マリチ』の存在俺がこの世界に来なければ一人だけ別次元の強さで存在していたことになる彼女今まで何をどうやって過ごしていたのだろうか、普通に聞いてみた「んー。ずっと森の奥にある妖精族の村で静かに暮らしてた」らしい冒険に出たこともなく普通に暮らしていたが、俺と出会った瞬間に過去のことを思いだしてすべてのスキルや魔法が使えるようになったし、想像するだけで持っている装備を引き出せるようになったというま
寝転がったベッドの上で両手を伸ばす何も持っていない手の内に剣を握るようなしぐさをする「エクスカリバー」シュポン(効果音)つぶやきとほぼ同時に手の中に冷たく輝く剣が出現その間0.5秒……なんかゲームの中にあった伝説の武器を現実世界で自由にとりだせるようになった……――――――――――――――――――――――――俺の名前は湊陽一(みなと よういち)医療系の大学に通う23歳だ昼過ぎから大学の研究室で実験を繰り返し、夜に帰宅したらそこから朝方まで『ソーマファンタジー』をストイックにプレイする……日々そんな生活をしているソーマファンタジーは世間によくある、剣や魔法や武術やら召喚術やらが活躍する世界主人公は多くのクラスに自由になることができるそしてモンスターを倒しながら冒険してランクを上げ、より難しいクエストに挑んだり、強い装備を集めて自己強化していくタイプのオンラインゲームだ高校に入った頃からプレイしているゲームな上に、大学に入ってからは重課金なのでステータスは最強数年かけて入手するような装備を何種類も揃えた全てを制覇し、もはや日課をストイックにこなすだけの生活であったのだが、先日新たに実装されたエンドコンテンツのボスとの戦いで久しぶりに時間を忘れて熱狂し、ついつい朝までプレイしてしまったほとんど睡眠をとらないまま学校に行こうと自転車に乗っていたら、ふらついて用水路に落ちて流されたどれぐらいの時間気を失っていたかは分からないが、目が覚めたらソーマファンタジーの『中にいた』 のが昨日そしてエンドコンテンツのボス『カオスドラゴン』を異世界で『リアルに』退治したら女神様にお礼を言われ、気がついたらいつもの一人暮らしの部屋のベッドの上に戻っていたそれが今――――――――――――――――――――――――――(冒頭のシーンに戻る)俺の手の中にはなんか伝説の剣があるどうやらソーマファンタジー(略してソーファン)で手に入れた装備、すべて呼び出し可能なようなのだ何と表現すればいいのか難しいが、どうやら異世界での持ち物やステータスをすべて現実世界と共有しているとでも言えばいいのかさらにゲームなどにありがちな、どう考えても持ちきれない量のアイテムをいつでも呼び出せるようなのだ最初は動揺したものの、数時間経った今はかなり慣れたソーファ







